ファイトケミカル成分を多く含む野菜食品の効果 がん予防方法
目次
ファイトケミカルとは?
ファイトケミカルは、フィトケミカルとも呼ばれ、植物が自身を守るために生成した天然の有効成分で、ビタミンやミネラルとは異なる、野菜の機能性成分(非栄養素)のことです。ちなみに、ファイト(phyto)はギリシャ語で野菜を意味しています。
ビタミンやミネラルなどの栄養素が豊富に含まれているホウレンソウ、ブロッコリー、ニンジンなどの緑黄色野菜は健康に良いと昔からよく知られていましたが、それ以外の淡色野菜にも抗酸化作用や免疫機能を調整する働きなどが多くあることが最近の研究でわかってきました。
ファイトケミカルの効果
ビタミンやミネラルなどの栄養素が不足すると、1ヶ月目くらいから肌荒れや不眠、疲労など、体になにかしらの変化が現れてきます。
ところが、ファイトケミカルは少し期間摂取しなくても、とりたてて、体に変化は現れません。
しかし、10年、20年という長い目でみると、ファイトケミカルを摂取している人と、そうでない人との間で大きな差がでてきます。
適量を摂取している人は、癌や生活習慣病などの病気になりにくいことがわかってきたのです。
ファイトケミカルには活性酸素を無毒化する抗酸化作用があるからです。
私たちの体の中では、常に活性酸素というものが生じ、これが正常な細胞を攻撃します。
抗酸化作用は、この活性酸素を中和して、私たちの細胞を守る働きをするのです。
その結果、いろいろな病気を予防することができるのです。
ファイトケミカルの主な成分
1万種類以上はあるだろうといわれているファイトケミカルの成分で、主なものを取り上げてみます。
イソチオシアナート
キャベツ、ブロッコリー、ダイコンなどのアブラナ科野菜に含まれており、発ガンを抑えるといわれています。
ポリフェノール、クロロフィル、カロテン
ニンジン、セロリ、パセリなどのセリ科野菜に含まれており、ガン予防に対する有効性が注目されています。
スルフォラファン
ブロッコリーに含まれ、発ガン物質の体内への侵入を予防します。特に芽の部分(スプラウト)はファイトケミカルの宝庫です。
リコピン
トマトに含まれ、活性酸素を除去します。
ルテイン
ホウレンソウに含まれており、視力の衰えを予防します。ガンの抑制にも有効です。
アリシン
ニンニク、ラッキョウ、ニラなどユリ科の野菜に含まれる独特の刺激臭で、抗ガン作用のほか、コレステロールや中性脂肪を低下させ、血行を促進させます。
イソフラボン
ダイズに含まれ、骨粗しょう症、更年期障害を予防する植物由来の女性ホルモンです。
アメリカのガン予防対策に学ぶ・ガン予防の可能性のある食品リスト
1990年にアメリカの国立ガン研究所が中心となってスタートした「デザイナーフーズ(ガン予防に有効とされる植物成分を基礎的に含む食品)」の研究から、効果が高いとさられている食品のランキングを作成しました。
ニンニク
キャベツ
ショウガ
ダイズ
セロリ
ニンジン
甘草
パースニップ(アメリカボウフウ)
茶
ターメリック
玄米
全粒小麦
柑橘類(オレンジ・レモン・グレープフルーツ)
ナス科(ナス・トマト・ピーマン)
タマネギ
アブラナ科(ブロッコリー・カリフラワー・芽キャベツ)
メロン
タラゴン
燕麦
ハッカ
オレガノ
タイム
ローズマリー
アサツキ
セージ
バジル
ジャガイモ
大麦
ベリー類など
キュウリ
ファイトケミカルでがん予防
日本での死亡原因となる病気の第一位はがんです。二人に一人は発生するともいわれています。
国民病ともいえるがんですが、実はなりやすい人となりにくい人の差があるということをご存知でしょうか?
野菜や果物の摂取で5倍の差
野菜や果物を摂らないと十分に摂取している人を比べた場合、約5倍の確率でがんになりやすいとも報告されています。そのため、食生活の改善によって予防できると考えられています。
研究によって科学的に有効性が示唆される
1990年にアメリカの国立癌研究所で発表されたデザイナーズフードプログラムによると発癌要因として食物・栄養・喫煙が6割を占めているとされています。
つまり、発がん因子の摂取を減らす、発がん抑制因子の摂取を増やす、体のバランス維持といった食生活に気を遣うことでがん予防につながることがわかっています。
特に、ファイトケミカルの成分の中には優れた抗がん作用のあるものがあり、がんのリスクを抑えられることが明瞭になっています。
ファイトケミカルががん予防に効果的である根拠
具体的にどのような働きがファイトケミカルによってもたらされるのでしょうか?
その働きの有用性を知るために、そもそも、がんになぜなってしまうのかメカニズムを把握する必要があります。
がんは私たちの体にある正常な遺伝子が時折、異常を起こし、それが長年に渡って蓄積されてがん細胞として発症する病気です。異常を起こすことを完全に防ぐことは難しく、このことからあらゆる人にがんリスクは潜在している要因になっています。
そして、この発がん原因として酸化ストレスをはじめとしたさまざまな刺激が考えられていて、その結果が遺伝子の変異が起こっていき、細胞の適度な入れ替わり(アポトーシス)によって保たれていたバランスが崩壊、がん細胞がどんどん増殖していってしまうのです。
がん細胞が発生してから(細胞が増殖していき)病気としてがんの発症に至るまで約10年から30年程度の歳月がかかるとされていて、このときに増えていくがん細胞の数を抑えることにより発症を遅らせることで、がん予防になることが明らかになっています。
がん細胞を死なせるファイトケミカル
がん細胞の数を抑えることががん予防になることがわかりました。
数を抑える、つまりがん細胞を殺す(破壊する)ことが必要となるわけですが、研究によるとファイトケミカルの中には細胞の入れ替わりを促進する(アポトーシス誘導の活性化)作用をもつものがあり、これががん細胞を死なせることでがん細胞の増殖を防ぐのに役立っているというわけです。
具体的には、ファイトケミカルであるポリフェノールのキサントンやカテキン(タンニンの主成分)、レスベラトロールといった成分が有用性を認められています。
有効成分を含む食べ物とは?
先に挙げた成分を含む食品をご紹介します。
キサントンが豊富な食物がマンゴスチン、カテキンを豊富に含む食物が柿(渋柿)、りんご、カカオ、ブドウ、イチゴ、ブルーベリー、金時豆で、飲み物としては煎茶、番茶、ほうじ茶、赤ワイン、コーヒー、ココアなどとなっています。レスベラトロールを含む食物ではコケモモ(リンゴベリー)、ブドウ、ピーナッツの皮、アーモンドの皮、ラズベリー、ブルーベリー、リンゴの皮、ザクロ、イチゴとなっています。
これらの成分でも、実際にはさらに細かく分類されるので、研究で発表され明らかになっているマンゴスチン、緑茶、ブドウを摂取することが最も確実でしょう。
がん細胞にさせないファイトケミカル
増えてしまったがん細胞の増殖を抑える働きとしてアポトーシスを促進するファイトケミカルの成分を上記で上げましたが、そもそも、正常な細胞をがん細胞にさせなければ、さらにがん発症のリスクは低下し、がん予防につながります。
そこで、がん細胞発生の原因とそれを抑える働きについて解説します。
活性酸素が遺伝子を傷つけがん細胞を生む
酸化ストレスなどの遺伝子への刺激が原因であると先に述べましたが、喫煙や飲酒、激しい運動、睡眠不足、排気ガス(大気汚染)や精神的ストレスを感じたりや紫外線を浴びることで発生したり、私たちが生命の維持に必要とする呼吸によって体内に入った酸素の一部が活性酸素になることで起こります。
完全に防ぐことが難しいのはこのことも大きな要因です。
ストレスを感じるな、太陽の光を浴びるな、呼吸をするな、なんて言えませんものね。
酸素が電子を2つ持っているのに対し、活性酸素は電子が一つだけで、他の物質の酸素を取り込むために結び付く性質があります。
活性酸素自体は本来、その性質によって体内の有害物質と結びつき、それらを除去する重要な役割があります。
ところが、必要以上に過剰発生した活性酸素は正常な細胞や血管までも傷つけてしまうのです。
人の体は約60兆個ほどの細胞で構成されていますが、その細胞を包んでいる細胞膜である不飽和脂肪酸が活性酸素と結合し酸化することで過酸化脂質になってしまいます。鉄でいうと錆びてしまっている状態で、これが老化の原因ともなっています。
この過程で傷ついた遺伝子をもった細胞が増え続けていくことでがん細胞となります。
ファイトケミカルが活性酸素を吸収する
近代社会では環境汚染や社会的ストレスが増大し活性酸素が発生る要因が増え続けています。
そして、人が本来持っている活性酸素を抑制する働きは加齢とともに弱まっていってしまいます。
その結果、増えすぎた活性酸素を抑える働きとして、ファイトケミカルの成分が活性酸素と結びつき、細胞を傷つけないようにしてくれます。これを抗酸化作用といいます。
自らを犠牲にして人間の体を守ってくれるなんて・・・にくいやつです。
抗酸化成分とは?
それでは具体的に、ファイトケミカルのどのような成分が抗酸化作用があるのでしょうか。
大きく分けて、ポリフェノールのフラボノイド系とフェノール酸系、カロテノイドに分かれます。
ポリフェノール・フラボノイド系
無色を含む、植物がもつ水溶性の色素で、紫外線を吸収するため、太陽の紫外線から身を守るために獲得したとされています。また病原菌に対する抗菌力や、受粉のためや外敵から身を守るために特定の昆虫を誘引、忌避させる作用があるものがあります。
成分名 | 分類 | 色素 |
アントシアニン(アントシアニジン) | アントシアニジン類 | 赤紫から青、橙色 |
ゲニステイン、ダイゼイン | イソフラボン類 | 無色から淡黄色 |
ルテオリン | フラボン類 | 無色から黄色 |
ケルセチン(ルチン) | フラボノール類 | 淡黄色 |
ヘスペリジン | フラバノン類 | 無色 |
カテキン(タンニン) | フラバノール類 | 褐色 |
フスチン、アルビノン、アンペロプチン | フラバノノール類 | 無色 |
カルタミン | カルコン類 | 赤色 |
レスベラトロール | スチルベノイド類 | 無色 |
ポリフェノール・フェノール酸系
フェノールは香料や色素の元となる物質で、色素以外のものがフェノール酸系としています。ちなみにポリフェノールのポリは多量を意味しています。
成分名 | 分類 |
フェニルカルボン酸 | タンニン類 |
エラグ酸 | エラグ酸 |
ロズマリン酸 | ロズマリン酸 |
クロロゲン酸 | クロロゲン酸 |
セサミン | リグナン |
クマリン | クマリン |
クルクミン | シゲトン類 |
カロテノイド
植物と動物がもつの脂溶性の色素となっていることがポリフェノールとの大きな違いです。炭素と水素原子のみで構成されるものがカロテン類となり、それに加え酸素原子を含むものがキサントフィル類に分類され、どちらも黄橙・赤・赤紫色の色素となっています。
成分名 | 分類 |
βカロチン、リコピン | カロテン類 |
ルテイン(ゼアキサンチン)、アスタキサンチン、クリプトキサンチン | キサントフィル類 |
これらは野菜や果物の果皮の色素や辛味成分で、植物自身が紫外線や外敵から身を守るために備えているものです。カプサイシンは唐辛子の辛味、スルフィニルはワサビの辛味、クロロゲン酸はナスの渋み、クルクミンはターメリック(ウコン)の黄色、ルテインはトウモロコシの黄色、リコピンはトマトの赤、カロテンはニンジンのオレンジ色、アントシアニンはブルーベリーの青のもととなっています。
活性酸素吸収力の高い野菜とは?
野菜のなかでも効果の高いものから順にランキングにしてみました。
1位 | モロヘイヤ | 2,605 |
2位 | ブロッコリー | 388 |
3位 | 水菜 | 177 |
4位 | 甘々娘(スイートコーン) | 173 |
5位 | 小松菜 | 170 |
6位 | ゴールドラッシュ(スイートコーン) | 134 |
7位 | 野沢菜 | 133 |
8位 | 味来(スイートコーン) | 131 |
9位 | ホウレンソウ | 107 |
10位 | おひさまコーン | 81 |
11位 | キタアカリ(ジャガイモ) | 80 |
12位 | 男爵(ジャガイモ) | 61 |
13位 | デジマ(ジャガイモ) | 55 |
14位 | メークイン(ジャガイモ) | 52 |
15位 | トマト | 43 |
16位 | 大根(浅尾大根) | 40 |
17位 | アンデスレッド(ジャガイモ) | 31 |
18位 | ズッキーニ | 28 |
19位 | きゅうり | 23 |
20位 | 白うり | 19 |
DPPHラジカル消去活性(Trolox相当量:µmol/100g)
※山梨県工業技術センター研究報告NO.20(2006年)より
圧倒的モロヘイヤ・・・っ!
各成分の効果と含まれる食品
抗酸化作用以外にも、さまざまな健康効果を有するファイトケミカルについて、各成分をひとつずつみていきましょう。
ちなみに、体に良いからといって、過剰摂取すると逆効果になるものもあるため、しっかり調べてから計画的に摂取することが肝要です。含有する食品も併せて掲載しますので献立のメニューなど食べ合わせを工夫してみてください。
ポリフェノール・フラボノイド系
成分名 | 効能 | 食品 |
イソフラボン(ゲニステイン、ダイゼイン) | 女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)に似た効果があり、血管や骨の守る働きをする。美容では肌ツヤが良くなる。過剰摂取するとホルモンバランスが崩れて女性特有の病気になるため注意する。 | 大豆、豆腐、納豆、豆乳など。 |
ルチン | 血行を良くし、毛細血管を強くする。 | ダッタンソバ、ソバ、ナス、ホウレンソウ、アスパラガス、レバー、米、小麦胚芽、無精製の穀類、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、ライムなど。 |
ルテオリン | 肝臓の解読作用、抗アレルギー・抗炎症作用をもち、花粉症やアトピー症状を抑える効果があるとされる。 | エゴマ、シソ、春菊、ピーマン、落花生、セロリ、パセリ、ブロッコリー、ニンジン、キャベツ、カモミール、味噌、ローズマリー、セージ、ハッカ、ミント、イチョウ、明日葉など。 |
カテキン(タンニン) | 高血圧の予防や血中コレステロール値を抑える、虫歯にも良いとされる。過剰摂取すると肝臓に影響が出るともされている。 | 柿、抹茶、緑茶、ワインなど。 |
アントシアニン | 眼精疲労に良いとされている。 | ブルーベリー、サツマイモ、ブドウなど。 |
プロアントシアニジン(タンニン) | 目の調子を良くする、血管を強くする。 | ブドウの種子など。 |
レスベラトロール | 血管を広げ動脈硬化を予防する、脳の血流を良くする。 | 赤ブドウの皮、赤ワインなど。 |
ヘスペリジン | 中性脂肪の分解、血行促進、血流改善、冷え性に効果的とされる。 | 温州ミカン、ハッサク、ダイダイ、バレンシアオレンジ、きんかん、グレープフルーツ、レモン、ライムなど。 |
ポリフェノール・フェノール酸系
成分名 | 効能 | 食品 |
クルクミン | アルツハイマー・認知症の予防、糖尿病や動脈硬化、リウマチの予防効果があるとされる。 | ターメリック(ウコン)、ショウガなど。 |
エラグ酸 | メラニンの元となるチロシナーゼ酵素を抑制しシミやくすみ、肌荒れを予防する | イチゴ、ラズベリー、ザクロなど。 |
リグナン(セサミン) | 血中コレステロールを低下させ高血圧の予防、肝臓に良く、免疫力増加効果があるとされる。 | ゴマ、亜麻など。 |
ロズマリン酸 | 花粉症やアレルギー症状の軽減、糖と脂肪の消化、吸収を抑える、血液中の中性脂肪の調整、精神安定の効果があるとされる。 | ローズマリー、シソ、レモンバーム、ウツボグサなど。 |
クロロゲン酸 | 糖質吸収阻害効果があり、糖尿病の予防やダイエットに効果があるとされる。 | コーヒー、プルーン、すもも、ヤーコン、じゃがいも、さつまいも、アーティチョーク、ゴボウ、春菊、ふきなど。 |
クマリン | 血管拡張、血流の促進で体の水分やリンパ液の流れも良くする。薬との飲み合わせに注意する。 | グレープフルーツ、ハッサク、ザボン、ボンタン、夏みかん、シナモン、明日葉、メリロート、ゆずの皮、パセリ、ニンジン、モモ、藤袴(ふじばかま)など。 |
カロテノイド
成分名 | 効能 | 食品 |
βカロチン | 体内で不足しているときのみビタミンAに変換されるため、βカロテンとビタミンAそれぞれの効能がある。夜盲症、視力低下、ドライアイを防ぐ、免疫力強化、肌荒れ、ニキビの予防 | にんじん、ほうれん草、ピーマン、かぼちゃ、かんきつ類、スイカなど。 |
リコピン | 前立腺に良く男性の不妊治療に。骨を強くし生成を促すため骨粗しょう症、歯周病の予防に効果がある。呼吸器系、喘息の改善。脂溶性のためトマトなどオリーブオイルと併せて摂取すると吸収率が高まり効果的。 | トマト、ミニトマト、スイカ、ピンクグレープフルーツ、柿 、なす、ピーマン、パパイヤ、さくらんぼ、プラム、ニンジン、あんずなど。 |
ルテイン(ゼアキサンチン) | 紫外線や加齢による視力低下である老眼・黄斑変性症、白内障を予防する効果あるとされる。 | ミドリムシ(ユーグレナ)、クコの実、ほうれん草、パプリカ、ブロッコリー、トウモロコシ、パパイヤ、マンゴーなど。 |
アスタキサンチン | 脂肪や脂質をエネルギーに変換しやすくし、糖の消費を抑え筋肉疲労を予防、疲労物質の抑制、低血糖、脳疲労の軽減、脳の血流促進。 | 紅鮭、マス、マダイ、 キンメダイ、イクラ、プランクトン、筋子、オキアミ、海老や蟹、ヘマトコッカスなど。 |
βクリプトキサンチン | 免疫力強化、風邪やインフルエンザ、生活習慣病、糖尿病、肝臓機能障害、骨粗しょう症、動脈硬化、メタボリックシンドロームに効果があるとされる。 | みかん(温州みかん)、デコポン、ポンカン、キンカン、柿、卵黄、バター、リンゴ、タンジェリン、パパイヤ、ビワ、赤ピーマン、マンゴーなど。 |
ファイトケミカルで免疫力強化
感染症やクローン病・リウマチ・アトピー性皮膚炎などの各種アレルギー疾患、自己免疫疾患、生活習慣病を防ぐためには、免疫力強化が欠かせません。
免疫とはその名の通り、病気から体を守る働きのことで、血液中に含まれる白血球がその役割を担っています。
病は気からということわざがありますが、精神的ストレスによって活性酸素が増えてしまうことで免疫機能のバランスを崩し、様々な病気にかかりやすくなってしまいます。
病気を防ぐためには、免疫力の強化と抗酸化作用のあるファイトケミカルを摂取できるバナナ、ショウガ、タマネギ、キノコ類、お茶、ゴマ、赤ワイン、トマト、ベリー類などを取り入れるようにしましょう。
体温を上げることで免疫力をさらにアップ
そのほか、体温が高いほど免疫力があがる(体温の一度で免疫力は5~6倍に、一度下がると3割低下)ため、ウォーキングなどの適度な運動や入浴(40度以上の浴槽に10分ほど浸かる)、血行を良くする玄米や小麦、味噌や納豆などの発酵食品と食べ合わせましょう。
腸内環境改善も効果的
さらに、腸内環境を整えることで効果が期待できます。
具体的には善玉菌を増やすヨーグルト、納豆、味噌、キムチ、酢、甘酒、かつお節などの発酵食品を食べるようにします。つまり生きたまま腸に届く健康に有益な微生物を取り入れるプロバイオティクスが有効です。
腸内には善玉菌、悪玉菌、どちらでもない菌が存在し、バランスをとっています。ビフィズス菌などの乳酸菌を含む発酵食品を食べることで善玉菌が多くなり、健康的な腸の環境を作ることができます。
ただし、悪玉菌が多くなってしまう便秘には注意しましょう。
食物繊維、オリゴ糖、マグネシウム、オレイン酸、ビタミンCなどを含む食品を摂取するようにします。
楽しく穏やかに暮らす
笑うことで免疫力が向上するというウソのようなホントの話。
免疫細胞であるナチュラル・キラー細胞(NK細胞)は笑うことで活性化します。
NK細胞は私たちの日々の健康のため、全身を巡り、がん細胞や病原体をやっつける役割を持っています。
そして活性酸素を発生させないように、リラックスして自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスを保つようにします。
若返り・老化防止(アンチエイジング)
老化現象は活性酸素が細胞や血管にダメージを与え、酸化させる=錆を発生させる現象です。
女性にはにっくきシワやたるみ、肌ツヤや張り、若々しさ・瑞々しさを損なわせる老化現象のほとんどが細胞の酸化によって引き起こされています。外見だけでなく、体内へのダメージも蓄積し、がん細胞を増加させたり、骨粗しょう症を引き起こし、骨を弱くするなど悪影響を及ぼします。
これまで説明してきたとおり、ファイトケミカルは体内で発生しすぎた活性酸素と結びつき人の体が傷つくのを防ぐ抗酸化作用に優れているため、若さと美容を保ち、アンチエイジングにつながります。
また基本的な栄養素であるビタミンC、ビタミンE、ビタミンAの抗酸化ビタミンの摂取を併用することで効果がさらに期待できます。
運動でミトコンドリアを増加させ抗酸化作用を促進
食べ物だけでなく、運動を合わせると効果はバツグンです。
なぜなら運動によって私たちの体内の細胞にいるミトコンドリアを増やすことができるため、活性酸素の除去に効果的な影響を与えます。
実は、このミトコンドリアが活性酸素を除去する抗酸化酵素を持っていて、活性酸素の9割がここで発生しています。
ミトコンドリアは1000から3000個が細胞内に含まれていて、酸素と食事で得られる水素によって体内エネルギーとなるATP(アデノシン三リン酸)を作る働きを持っています。
息が上がる程度の運動によって、そのATPが消費されていき、やがて不足します。それによって筋肉細胞内の酵素であるAMPキナーゼ(AMP活性化プロテインキナーゼ、AMP-activated protein kinaseの略。AMPKとも)が活性化、長寿遺伝子といわれるサーチュインが反応しPGC-1αというたんぱく質を活性化し、ミトコンドリアを増加させます。
サーチュインはミトコンドリアを増やすだけでなく、FOXOというたんぱく質も活性化することでミトコンドリア内のSODやカタラーゼという抗酸化酵素も増やすことにつながるため、活性酸素の除去が促進されるというわけです。
ダイエットとファイトケミカル
肥満、メタボリックシンドロームと活性酸素の関係性は高く、ファイトケミカルの抗酸化作用をうまく機能させることで肥満の防止、ダイエット効果を得ることができます。
肥満のメカニズムのひとつとして、活性酸素が細胞を攻撃しエネルギー代謝機能を損なわせてしまいます。そうすると体内の糖を分解できなくなり、中性脂肪として蓄積、肥満につながります。
血管内では活性酸素が過酸化脂質となってしまい、それを除去するために免疫細胞である白血球が過酸化脂質と結びつき、死骸となって血管内に蓄積、コレステロールの原因となります。
抗酸化作用の高いファイトケミカルをもつ野菜などの食物を普段から食事に取り入れることで肥満防止、改善につながるでしょう。
食べ過ぎの防止や脂肪の分解を促進させる成分
さらに、ほうれん草や小松菜に含まれているクロロフィルが食後の血糖値の上昇を抑え、食欲をコントロール。間食防止に効果があります。
また、コーヒーに含まれているクロロゲン酸の脂肪燃焼促進効果で、脂肪の分解を促進、体脂肪の蓄積を抑える働きがあります。注意点として、食後のコーヒーではなく、食前のコーヒーのほうが効果がで期待できることです。
無論、食べるだけで痩せる、飲むだけでで痩せる、といった脂肪燃焼効果はないので、適度な運動を合わせて効果的なダイエットに励むことが肝要です。
育毛・発毛(薄毛対策)とファイトケミカル
このハゲー!なんて言われたくない・・・そんな薄毛に悩む人も多い現代社会ですが、ファイトケミカルがここでも活躍します。
毛根という言葉があるように、植物と同じように髪の毛も肌に根を張って、伸びていきます。
この根がないと当然ですが、髪は生えてきません。
この根である毛乳頭細胞を1.8倍も増やすことができるとされる成分がブロッコリーとブロッコリーの新芽(ブロッコリースプラウト)に豊富に含まれているスルフォラファンです。
さらにBMP4と呼ばれる骨形成タンパク4の遺伝子発現率も向上し、細胞に毛が生える確率もあがると近畿大学の研究の発表がされています。
・・・と、ここまで期待させてしまい申し訳ないのですが、実際にはまだ研究段階で、ブロッコリーを食べることによる育毛効果は実証されていません。
ですが研究はまだまだ続いているので、今後に期待しましょう。
ファイトケミカルスープの作り方
ファイトケミカルの本を執筆している麻布医院院長の高橋弘さんはアメリカのハーバード大学医学部の大学院で免疫栄養学を研究されていました。
その高橋さんが考案したファイトケミカルスープは「ハーバード大学式野菜スープ」とも呼ばれています。
TBSテレビ「あさチャン!」あさトク 2017年6月29日放映で紹介されたレシピは次の通りです。
鍋に1リットルの水を張り、キャベツ、タマネギ、ニンジン、カボチャをそれぞれ100g、手のひらに収まり食べやすいサイズに切ってニンジンとカボチャを皮ごと、材料を全て鍋に入れ30分弱火で煮るだけ。冷凍保存で2週間もちます。
また、調理で残った野菜くずを鍋に入れ煮込み、使った野菜を取り除けば栄養満点の野菜スープ、ベジブロスが出来上がります。ポイントは食べづらい皮やへたなどの成分を丸ごとだしにすることで栄養を手軽に頂けることです。
これらをベースとして他の食材と合わせて食べやすくしたり、色々レシピを変えて食べ続ける習慣を身に着けると効果的にファイトケミカルを摂取できますね。
2018/11/11