妊娠前・妊娠初期・授乳中など大切な赤ちゃんや胎児への影響を避けるため、安全性の高い食事でしっかり栄養を摂取したい、離乳食を考えているというママさんや子供がアトピーでアレルギー物質・添加物のある食べ物を与えないように苦労しているママさん、スーパーに並んでいる、あるいはレストランが外食チェーン店で使用されている野菜やお米の残留農薬、気になりますよね!
完全無農薬ではない限り、安全性の高いといわれる国産だろうと、安心安全な有機野菜と名前がついていようと、少なからず農薬が使われている場合がほとんどです。
以前、食の安全性への関心が強いはずの日本は、実は世界でもトップクラスで農薬を使っている国であることを、農林水産省の信頼できる公表データを元に解説しました。
ここでは、より具体的に、農薬の人体への影響と危険性、実態へと迫っていきます!
目次
日本では、死亡事故も起きた有機リン系の農薬の使用が規制されていくなか、90年代にとある農薬のが登場し2000年代ごろに農家での使用が増えるようになります。現在でも主流となっているこの農薬は、ネオニコチノイド系の農薬です。
ネオニコチノイドはクロロニコチニル系殺虫剤の総称でニコチン様物質を意味し、シナプスの神経伝達物質アセチルコリンの受容体ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)に結合することで神経を過剰に刺激したり伝達を遮断するなどして害虫を死なせます。
なんだか難しい説明ですが(汗)、つまり脳神経に作用する毒物ということです。
なぜこの農薬が広く使われるようになったかというと、これまでの農薬に比べ、少しの量で効果的に害虫を駆除できるためです。
水溶性のため土壌に含まれれば根が吸い上げるなど浸透性が良いので散布するだけで作物全体に効果が発揮し、さらに残存性が高いことからも一回の効果で長期間持続します。そのため農林水産省も使用を推奨しています。
少ない回数で効果が期待できるということは、低農薬(減農薬)の野菜を作るうえで重要になります。
基準に従っているとお墨付きがもらえる「有機栽培」や「特別栽培」ですが、慣行栽培(農家の9割がこの方法と言われている農薬散布を中心とした栽培方法)に比べ、農薬の使用量を減らしていますよ、という程度の認定なので、その基準は科学的に厳密なものでありません。
具体的には、減農薬の基準が、その地域の慣行栽培と比べて50%以下程度を下回れば良い、というような基準になっています。つまり、農薬を10回する地域で5回以下の農薬を使うのであれば、その作物は有機栽培や特別栽培を受けられる仕組みになっているわけです。
有機農薬・特別栽培だからといって、農薬を使用している場合がほとんどなわけですが、その農薬のなかで多く使われているネオニコチノイド系の農薬では、以下のように、7種類の成分があります。
アセタミプリド ・イミダクロプリド・クロチアニジン・ジノテフラン・チアクロプリド・チアメトキサム・ニテンピラム
アセタミプリドを含む薬剤として日本曹達社が開発したモスピラン、マツグリーン、イールダーSG、アリベルがあり、果樹、野菜などのコナガ、ツトガ、アブラムシ、タマゾウムシ、シロアリ駆除及び松枯れ対策に使用します。
イミダクロプリドを含む薬剤としてバイエル社が開発したアドマイアー、メリットがあり、野菜の定植時に植穴処理に用いるほか、アブラムシ、コナジラミ、ミナミキイロアザミウマなどの長期的防除として使用します。
クロチアニジンを含む薬剤として住化武田農業社がバイエル社と共同開発したダントツがあり、カメムシ、ヨコバイ、アブラムシ、ミカンハモグリガなど防除に使用します。
ジノテフランを含む薬剤として三井化学社が開発したスタークルがあり、カメムシ、ウンカ、コナジラミ、アブラムシ、シロアリ駆除に使用します。
チアメトキサムを含む薬剤としてシンジェンタ社が開発したアクタラがあり、アブラムシ、コナジラミ、コナガ、ハモグリバエなど防除に使用します。
ニテンピラムを含む薬剤として住化武田農業社が開発したベストガードがあり、稲のウンカ、野菜のアブラムシの駆除のほか、動物用医薬品に使用されています。
駆除の対象である昆虫と人間の神経系の基本構造は同じため、ネノニコチノイドで汚染された野菜や果物、緑茶など食品由来の中毒症状が報告されています。具体的には不整脈・手の震え・頭痛、記憶障害など、自律神経、中枢神経、免疫系を含む全身に障害を与えるものとなっています。
やはり小さい子供のほうが大人よりも影響を受けやすく、多動性障害、ADHDや学習障害、知能指数の低下といった成長に関わるものへつながる可能性が見られています。
また、ネオニコチノイドは調理の際に加熱しても147~270度以下では熱分解しません。残留食品体の飲食を続けることで体への蓄積の原因となり、中毒発症につながるだろうとされています。
日本は「ネオニコチノイド先進国」 金沢大学名誉教授らなど
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/148695
名前がよく似ていることから想像がつくかもしれませんが、あのタバコのニコチンとよく似た化学構造式になっていて、当然ながら作用も似ています。そもそも名前の由来は新しいニコチンという意味からきています。
ニコチンは毒性があることはご存知であるかと思いますが、あの名探偵コナンくんにもよく(?)登場する青酸カリに匹敵する急性毒性で、致死量は大人で40~60ミリグラム、子供で10~20ミリグラム、タバコ2本、3本というごく僅かな数です。
そして、ママさんたちにとって重大な問題である赤ちゃんへの影響も。
タバコには代表的な悪い成分としてニコチンとタール・一酸化炭素が含まれています。ニコチンは、血管を縮小させ子宮の血液の流れを悪くし、タールは発がん性物質であり、また一酸化炭素が血液の中で酸素を運んでいるヘモグロビンと結合することで酸素を運ぶ邪魔をしてしまいます。
これらの原因によって胎盤と胎児は酸素の欠乏状態に陥り、胎盤や胎児の発育の障がいにつながります。具体的な症例として流産・早産、胎児死亡、低出生体重児、新生児死亡などがおこります。
赤ちゃんとタバコ 中野区医師会
http://www.nakano-med.or.jp/kinen/akachan/index.php
スーパーで並んでいる野菜や外食チェーン店などの野菜はふつう、慣行栽培で作られた野菜です。日本全国の大量消費に応えるため大量生産するため、圧倒的に効率の良いネオニコチノイド系の農薬を散布したお野菜(お米)がほとんどなのです。
食料自給率の問題などから、そうせざるを得ない事情はもちろんあります。
しかし、科学者たちが世界的に警鐘を鳴らしていることも事実であり、人体や環境への重大な影響を引き起こすさまざまなデータが実証されていき、かつての有機リン系農薬のようにいつか使用が禁止される(=使ってはいけない農薬として認定される)こともそう遠くないかもしれません。
事実を知ってしまった以上、気になってしまうのは無理がない話です。
ましてや、大切な我が子の一生を左右する問題になりかねません。対策する方法があるなら、講じてみることは決して無駄ではないはずです。
それにはやはり入り口から。
以前にもお伝えしていましたが、個人の農家から直接野菜を買うことで、この問題を回避することができます。
もちろん、ふつうの農家ではなく、無農薬に徹している農家であることや、ネオニコチノイド系の農薬を使ってないことがわかる有機農家を選ぶ必要があります。
ここからは、農薬そのものについて深堀りして解説していきます。
上記までで、抑えるべき情報は抑えられているはずですので、ここから先の情報はよほどマニアックな方向けとなります笑
長くなってしまいますし、専門的な内容なので、農薬について徹底的に知りたい!という方だけ、続きをどうぞ。
現在、農作物の病害虫や雑草の防除にもっとも大きな働きをしているものは農薬です。
農薬には、病害虫防除のための殺菌剤・殺虫剤・雑草防除のための除草剤、作物の成長促進や着果促進および摘果などのために使われる植物成長調整剤などがあります。
また、天敵を大量に飼育あるいは培養してそれらを耕地に放飼し、すみやかに防除効果をあげようとする場合、点滴の農薬的な利用法という見方から、これを生物農薬と呼びます。
なお農薬の有効成分と同じものを含み、それが人減や家畜の衛生管理のためにつくられ使用される場合は、農薬とは呼ばずに防疫剤と呼びます(DDVPなど)。
防疫剤は有効成分は農薬と同じでも、含有量や製剤形態が違っていることがあり、作物に使用すると効果が低かったり薬害を出したりすることがあります。
そのため農業用には、必ず農薬として作られたものを用いるようにします。同じく、室内や畜舎内のハエや蚊を駆除するときには、農薬を使わず防疫用としてつくられた薬剤を使います。
農業はその種類や製剤形態によって、対象となる病害虫や雑草の種類が決まっています。
1種類の薬剤で対象となる病害虫の範囲が広いもの(汎用性農薬)と、狭いもの(選択制農薬)とがあります。
また、①散布したあと長期にわたって効果を持続するもの(残効性)と、散布後すみやかに効果がなくなるもの、および②効果の発言の遅いもの(遅効性)、すみやかに効果を現すもの(速効性)などがあります。防除効果の点からいうと残効性の高いものほど良いですが、安全さの点からは速効性のものが良いです。
殺虫剤は、昆虫・ダニ類・センチュウ類を防除するための農薬です。
殺虫剤は、口・皮膚・気門などから体内に侵入します。体内にはいってから作用点に到達するまでの経路は、薬剤によってはそのままの形で作用点に達するものもありますが、多くは体内の酵素による分解と活性化、特殊な器官への蓄積、排せつなどの抵抗を受けながら、神経系・呼吸系・筋肉系などの作用点に達して毒性を発揮し、死亡に至らせます。
例えば、有機リン剤は、体内でアセチルコリンを分解している酵素(コリンエステラーゼ)の作用を阻害し、そのために有毒な物質が蓄積して死亡させます。
殺虫剤は、有効成分が体内へ侵入する経路によっていくつかの種類に分類されますが、多くは一つの経路によって効果を発揮するのではなく、二つ以上の経路によって効果を発揮します。
これは害虫に付着させると、皮膚の表面から体内に侵入し、殺虫効果を現すものです。有機塩素剤・有機リン剤のいくつかの種類、カーバーメート剤・硫酸ニコチンなどがあります。
これは植物の表面に付着させると、植物に吸収され、植物の汁液に混じって体内を移動し、全体に行き渡らせます。
その汁液を吸った害虫に作用して殺します。有機リン剤のジメトエートなどがこれで、おもにアブラムシ類・ハダニ類などに効果があります。
この種の殺虫剤は、害虫自身に付着してももちろん効果があります。
これは毒剤とも呼び、植物に付着させ、その植物を食べることによって害虫を殺すものです。
ナメクジなどを駆除するメタアルデヒド剤などはこれに属します。
散布するとすぐに気化し、それを吸い込んだ害虫を殺します。DDVPなどの有機リン剤、EDBなどの殺センチュウ剤などがあります。
殺虫剤は、その殺虫成分から見て、いくつかの種類に分けられます。
成分によって作用機作が異なる場合が多く、また取り扱い方も違っています。
有機リン酸エステル系の化合物で、動物の神経機能を阻害します。
速効性のものが多く殺虫力が強いですが、分解されやすいので残留毒性は低くなっています。
作物に対する薬害も、特別の例を除いては割合が少なくなっています。
有機リン剤のうち、初期に開発されたシェラーダンやパラチオンは、人畜に非常に強い毒性を持ち、しばしば事故を引き起こしました。
MEP・MPP・ダイアジノン・マラソンなどは、稲の害虫を中心に広く用いられます。
DMTP・PMP・サリチオンなどは、主に接触殺虫効果を持ち、園芸害虫に用いられます。
ジメトエート・EPS・チオメトンなどは浸透移行性が強く、ハダニ
アブラムシなどの防除に用いられます。
DDVP・MEPなどは気化しやすく、ハマキムシなどにもよく効きます。
塩素を含む有機化合物で、有機合成殺虫剤としては早くから用いられました。
主として接触殺虫効果を持ちますが毒剤としても効き、安価で、残効性も高いため広く用いられました。
DDT・BHC・ドリン剤はその代表的なものです。
これらは自然界でも変化せず長く効果を持ち続けることが、食品残留毒性や環境汚染の面から問題になり、生産が中止されました。
農業の歴史のうえからは忘れることのできない薬剤です。
ガルバミン酸エステルに属する化合物で、神経機能を阻害する点では有機リン剤に似ています。
主に接触殺虫効果を示します。
NACはこの類でもっとも広く用いられ、稲・果樹・野菜などの害虫に効果があります。
MTMC・MIPC・BPMCなどの薬剤は、ウンカ・ヨコバイ類にだけ効果があります。
天然の動植物体から抽出される成分を用いた殺虫剤です。一般に速効的で、分解が速く、人畜に対する悪影響や、作物に対する害が少なくなっています。
ですが天然物であるからといって、人畜毒性や薬害が全くないわけではありません。
また、原料の供給がやや不安定なので、生産量が限られることがあります。
ピレトリン(ジョチュウギクから抽出)・ロテノン(デリスの根から抽出)・ニコチン(タバコから抽出)などがあります。
ニコチンの硫酸塩となる硫酸ニコチンは、ミカンハモグリガ防除などに使われます。
また、これら天然産の殺虫成分に類似するものを人工的に合成して殺虫剤としたものにアレスリン(ピレトリンに類似)・カルタップ(海産動物のイソメの毒に類似)などがあります。
カルタップはニカメイチュウなど、鱗翅目の幼虫に効果があります。
同じ天然産物でも石油を精製したマシン油からつくられる殺虫剤としてマシン油乳剤があります。
これは油の膜で害虫の体を覆って窒息させるもので、人畜に対する毒性は低いです。
果樹のカイガラムシ・ハダニ類に用いられています。
これまでにあげてきたものは、主として殺虫成分による分け方でしたが、上記のもの以外に特定の害虫を対象とした殺虫剤があります。
それを用途によって分けると次のようになります。
ダニは昆虫と同じ節足動物ですが、生理的にはいくらか違っているので、ダニに効く薬剤はかならずしも昆虫に効くものと同じではありません。
また、殺虫剤のなかには有機リン剤のようにダニ類に効くものもありますが、多くのものは効果がありません。
ですが最近、ダニ類だけに効く薬剤が開発され、この薬剤を殺ダニ剤と呼んでいます。
殺ダニ剤としては、クロルベンジレート・ケルセン・CMP・ベンゾメート・キノキサリンなどが用いられています。
テトラジホンはかつて非常に広く用いられましたが、ハダニにこの薬剤に対する抵抗性ができたので、現在ではあまり使われていません。
地中に入れると気化してガスとなり、土の隙間に浸透してセンチュウを殺す薬剤です。
殺センチュウ剤には、作物に薬害が強いために植え付けまたは種まき前でないと使用できないもの(D-D・EDBなど)と、作物の生育中でも使用できるもの(DCIPなど)とがあります。
センチュウは昆虫やダニと非常に違った動物なので、殺センチュウ剤も一般の殺虫剤と大きく違っていますが、これは主に地中生活というセンチュウの生態に合わせて効かせるためです。
殺センチュウ剤には地中に住む他の害虫に効くものが多いです。
地中や密閉した場所にいる害虫を殺すために用いられます。
殺センチュウ剤も一種のくん蒸剤です。農業に用いられるものには、倉庫に貯蔵中の穀物や果実の害虫を殺すクロルピクリン(土壌殺虫剤・土壌殺菌剤としても使われる)、倉庫の穀物などの害虫を殺すリン化アルミニウムなどがあります。
殺菌剤をその作用機作によって大別するとつぎの二つになります。
これは作物体上で糸状菌の胞子や細菌を殺すか、胞子の発芽や付着器の形成を阻害して発病を予防するもので、ボルドー液が代表的です。
これはすでに作物体に浸入した病原菌に作用して菌糸の拡大や胞子の形成を阻害して治療的効果を発揮するもので抗生物剤などが代用的です。
保護殺菌剤は、発病前か発病のごく初期に効果があり、直接殺菌剤は病気が多少進行してからでも効果があります。多くの薬剤はこの二つの効果を合わせ持っています。
また、殺菌剤には薬剤が病原菌の細胞内に浸透して生理作用を阻害して殺すものと、直接病原菌は殺さないですが、病原菌の分泌する毒素や酵素を不活化し病原性を失わせたり、耐病性を増したりするするものとがあります。
殺菌剤もその殺菌成分から見て、いくつかに分けることができます。
古くから使われている殺菌剤は、無機の銅や硫黄などの殺菌作用を利用したものです。
ボルドー液は19世紀から現在まで広く用いられている殺菌剤で、硫黄銅の水溶液と石灰乳を混合した液です。
使用するさいにその目的に応じて、硫黄銅と石灰の割合を変えて調製します。
ボルドー液の殺菌効果は硫黄銅によるもので、石灰のなかに含まれた銅が少しずつ溶け出して長期間にわたって保護の作用をします。
ボルドー液は、各種の病気の感染防止に有効ですが、作物の種類や条件によっては薬害を起こしやすいです。
石灰硫黄合剤は、石灰と硫黄を高温で反応させてつくった赤褐色の液体で、水で薄めて用います。
さび病やうどんこ病に効果があります。
毒性は高くないですが、高温の時は薬害を起こしやすくなります。
水和硫黄剤および硫黄粉剤はいずれも硫黄の細かい粉末を主成分としたもので、石灰硫黄合剤と同様の効果があり、薬害は少なくなっています。
有機硫黄剤は一般に保護殺菌効果の高いやや遅効性の薬剤で、無機の硫黄剤に比べて薬害が少ないため、果樹・野菜・草花・緑化樹などに広く用いられています。
ジネブは野菜・果樹に用いられ、ミカン黒点病やナシ黒点病、ジャガイモ疫病などに効きます。
ミカンサビダニにも効果があります。
薬害も少なく人畜に対する毒性も低いですが、雨などで流されやすいです。
マンネブもジネブとよく似ていて、とくにウリ類の黒星病、イチゴや草花の灰色かび病などによく効きます。
これらの薬剤は人によっては、皮膚のかぶれを生じることがあります。
殺菌剤の有機塩素剤は殺虫剤と違って、人に対する毒性は低くなっています。
PCPは除草剤としても使われ、強い殺菌力をもちますが、薬害を生じやすいです。
このナトリウム塩を石化硫黄合剤と混用すると薬害が少なくなります。
越冬菌を殺すのに用いられます。
TPNは有機硫黄剤によく似た効果があり、園芸作物の病害防除に用いられます。
殺菌剤としての有機リン剤は、近年になって開発されたものです。
IBP・EDDPなどはいずれもいもち病にすぐれた効果を現します。
いもち病以外に紋枯れ病などにも効き、また、殺虫剤としてもある程度の効果があるので、これらの使用によって収量や品質を改善する効果が大きいです。
殺菌剤として農薬に用いられる抗生物質剤にはスレプトマイシンのように医薬から転用したものと、ブラストサイジンS・カスガマイシンなどのように農業用に開発したものとがあります。
スレプトマイシンは細菌性病害に効果があり、ハクサイ軟腐病やミカンかいよう病などに用いられます。
ブラストサイジンSは、いもち病の治療効果がありますが、眼に障害を生じることがあるので、防除作業のときは保護めがねをつけなければなりません。
ポリオキシンは稲紋枯れ病やナシ黒斑病など、いろいろな糸状菌による病害に効果があります。
これまでにあげてきたもの以外の成分を主とする有機合成殺菌剤として、ジチアノン・チオファネート・ダイホルタン・キャプタンなどがあり、野菜や果樹の糸状菌による病害に効きます。
また、土壌病害に対して用いられるものとしては、クロルピクリン・PCNBなどがあります。
除草剤には多くの種類の植物を枯らす非選択制のものと、特定の植物だけを枯らす選択制のものがあります。
除草剤は植物の生育段階によっても、その効果は著しく違いますし、製剤ごとに対象雑草や使用時期・方法がかなり違うので、使用上注意が必要です。
除草剤を作用機作によって分けると、接触型と移行型とになります。
植物に薬剤が付着すると、その部分が枯れるもので、ヘキサジノンなどがこれに含まれます。
直接茎葉に散布する方法やあらかじめ土を薬剤で処理しておき、発芽直後の植物を接触させて枯らす方法があります。
これは、植物に吸収され、体内に薬剤が移行して徐々に殺草効果を現すもので、2.4PA(2.4-D)やMCPなどは植物の呼吸を促進させ、異常成長をおこさせて枯らします。
植物ホルモン過剰と似た作用をするのでホルモン型と呼びます。
CATやDPAは非ホルモン型と呼ばれ、根から葉に移行した薬剤が光合成を阻害して枯らします。
雑草は種類が多く性質が非常に異なるため、それらを殺す除草剤は、その殺草成分がいろいろです。
接触型・非選択制の除草剤です。
茎や葉にかけるとすみやかに効果を現します。
PCPが代表的なもので、土に施すと発芽種子に作用して殺草効果を現します。
かつては作物の根に害がないのでよく使われましたが、水生動物に非常に強い毒性をもつので、厳しい使用規制が行われています。
接触型・非選択制の除草剤です。
CNPなどはPCPと同じような効果があり、魚毒性が低いので、水田などでひろく使われています。
田植え前後の水田に使いますが、畑の土壌処理にも使用します。
DCPAは接触型で稲属を除く稲科植物に選択的に効きます。
水田のヒメシバやノビエの防除に効果があります。
水田では落水後使用します。
移行型で、一般に非選択制の除草剤です。
根から吸収されて光合成を阻害します。
CAT・プロメトリン・アメトリンは、畑などの土壌処理に用いられます。
シメトリンは根ばかりでなく茎葉からも吸収されて効くので、水田除草にも用いられます。
プロパジンは選択制があり、セリ科には害が少ないので、ニンジン畑で使用されます。
移行型除草剤で、選択制は製剤によって違います。
IPCはイネ科植物に選択的に効き、畑地雑草の防除に用いられます。
低温時に有効なので、冬作物の除草に適しています。
MCCは非選択制で接触型除草剤としての効果もあわせ持っています。
ベンチオカーブはマツバイ・ノビエなどによく効く水田除草剤で、一般には薬害は少ないですが、高温時などには薬害を生じることがあります。
移行型・選択制の除草剤です。
植物体に吸収されると異常成長を起こさせるホルモン型の作用をします。
2.4PA・MCPなどは、いずれもイネ科植物には作用しませんが、広葉の雑草に強い選択的効果を示し、水田や畑で用いられます。
2.4PAは低温では薬害がでることがあり、効力も劣ります。
MCPは2.4PAに比べて薬害が少ないことから北日本の水田除草に使われています。
DCMUは尿素系の移行型・非選択制除草剤で、土壌処理によって根から吸収され、光合成を阻害します。
茎葉処理で使われていることもあります。
畑や果樹園で使われます。
パラコートは接触型・非選択制で、茎葉に散布するとすみやかに吸収されて草を枯らしますが、土中ではすぐに不活性化するので果樹園の下草防除などに使われます。
プロマシルは尿素系除草剤に似た移行型・非選択制除草剤で、接触殺草効果もあります。
果樹園の除草に用いられます。
野ネズミ駆除用の薬剤で、すべて食餌につけて用います。
黄りん・りん化亜鉛・モノフルオル酢酸塩・クマリンなどがあります。
モノフルオル酢酸ソーダは、人畜に対する毒性が強く、特定植物に指定されており、定められた基準に従って使用しなければなりません。
誘引剤は害虫を殺す薬剤ではありませんが、特定のにおいによって特定の害虫を誘い集める薬剤です。
ミバエに対するメチルオイゲノールがその例で、防除の場合には誘引剤はふつう毒剤を併用します。
忌避愛はやはりにおいによって害虫または害鳥獣をよせつけないようにする薬剤で、ネズミに対するシクロヘキシミドなどがその例です。
病害虫の防除に使われる薬剤ではありませんが、作物の生理作用を調整する直物成長調整剤があります。
ジベレリンはイネばか苗病菌がつくりだす物質で、種無しブドウをつくるのに用いられます。
OEDは葉に散布すると水分の蒸散が抑制されるので、移植苗の活動をよくします。
マレイン酸ヒドラジドはタバコのわき芽発生を抑制する効果があります。
製剤自体には殺菌力や殺虫力はなく、主目的の薬剤の効果をいっそう増進させるために加える薬剤を展着剤といいます。
展着剤は、薬剤を作物や害虫の体によく付着し効力を持続させます。
薬剤が均一に水に溶け、むらなく散布できるように懸垂性・乳濁性をよくするなどの効果をもっています。
展着剤としてもっとも多く使われているものは界面活性剤で、その他農業用石鹸(硫酸ニコチンや除虫菊剤用)・カゼイン石灰も使われます。
農薬の多くは、人体や家畜などの動物に強い毒性があります。
それで、農薬の販売・使用が許可される前に、毒性について厳しい試験が行われています。
その結果によって使用が許可された農薬は、それぞれの毒性の強さに従って普通物・劇物・毒物・特定毒物のいずれかに指定され、そのどれに属するかによって使用や取り扱いかたに規制が加えられています。
農薬はすべてその容器にこのいずれかに属するかを表示しなければならないことになっています。
近年、特定毒物や毒物に属する農薬は次第に減る傾向にあります。
農薬の中毒には、急性中毒と慢性中毒とがあります。
急性中毒は農薬を誤って飲んだり、散布中に多量に吸入したり皮膚についたりした場合に生じます。
頭痛・めまい・吐き気・腹痛などを起こし、激しいときは死亡します。
また、これらと別の症状を起こすものとしては、皮膚のかぶれや眼の障害があります。
有機リン剤はめまい・頭痛を起こしやすいです。
ブラストサイジンSは特異的に眼の障害を起こします。
ごく軽い農業中毒は自覚症状が出ない場合が多いですが、このようなことがたびたび起こると、体が弱ったり、あるいはその薬剤に特別に過敏になったりして次第に重症の慢性中毒になることがあります。
農薬の中毒を防ぐ方法は、その取り扱いに注意することが第一です。
中毒の大半は保管あるいは使用のさいの不注意からきています。
農薬散布の際は、できるだけ服装を完全にして薬剤が直接体につかないようにし、さらに散布の際はマスクをして薬剤の吸入を避けます。
また、病気が治ったばかりの人や手足に傷がある人、妊婦など健康に注意を要する人は、作業に参加しないようにします。
健康な人でも長時間連続しての散布作業は避けます。
散布中に体に異常を感じたらすぐに作業をやめて医師の診断を受けます。
人体に毒性の高い農薬は大抵家畜に対しても高い毒性を持つます。
それで散布作業中は付近の家畜は遠ざけ、また散布直後の果樹園や畑に家畜が入れないような処置を講じます。
人体や家畜に対する毒性のうちで、直接農薬に触れていない人にまで影響を及ぼすことがあります。
使用された農薬の大部分は、分解しあるいは雨などで流出してなくなりますが、その一部は収穫物などにはいって、毒性をもったまま人間や家畜に摂取されます。
その量はごく少ないですが、長時間続けて摂取されていると、体内に蓄積して健康を害するおそれがあります。
これを残留毒性といいます。
これは作物に付着したものがそのまま収穫物に残っている場合と、土中に残留したものが作物に吸収されて収穫物にはいってきた場合とがあります。
散布された農薬のかなりの量が、風や雨によって河川や池沼や海に流れ込みます。
これは魚や貝などに大きな害を与えます。
昭和37年に九州の有明海でPCPを主な原因とする水産生物の大量死が生じ、これをきっかけに農薬に対する水産生物の被害防止が大きな問題にあがってきました。
現在、農薬のそれぞれの種類について、魚やミジンコなどの水産生物に対する毒性が調べられています。
この毒性を魚毒性と呼んでいます。
農薬は魚毒性の強さによって、A・B・C・Dの4類に区分され、とくに魚毒性の強いC類などは、河川や池沼などに飛散・流入しないよう、その使用に規制が加えられています。
また、農薬が広範囲にわたって使用されるときに、水産動植物に影響が発生するか、または農薬の使用によって公共用水の水質の汚濁が生じ、その水の利用が原因となって人畜に被害を生じるおそれがある農薬は、水質汚濁性農薬に指定され、D類として分類されます。
これらの農薬も使用地域、使用法が規制されています。
農薬を使用した場合に、収穫物中に残留してもよい量は、食品衛生法に残留許容量として定められています。
残留許容量は、人体に影響を与えない量(毎日摂取して一生続けても健康に影響しない量)、つまり1日摂取許容量です。
残留量がこれを超えないようにするために設けられたのが「農薬残留に関する安全使用基準」です。
この使用基準は、農薬の種類別・作物別に、使用できる剤型、使用方法、使用禁止期間、使用回数が定められています。
農薬を使用する者は、この基準をよく知って、農薬の安全使用に心がけしなければなりません。
近年は減農薬(低農薬)がうたわれ、かつてよりも安全への意識と配慮が高まりました。
それでも、まだまだ農薬への依存度が高く、本当の意味で安心安全な野菜やお米が広く届けられているわけではありません。
こうした背景を知って、農薬を使っていない野菜・お米を探すなら、個人農家から直接買うことがひとつの方法です。
ニーズがある限り、あいうえお農園では農薬を使わない栽培を続けてまいります。